ある満月の夜

俺は1人の青年に会った


「こいつアウトォォオオ!!!」

任務から帰ってすぐのことだった
門番の一言

アクマ

俺はコートと六幻を引っつかみ
部屋を飛び出した
アクマなら壊すのみ

青年を見た

白髪を見た時
老人かと思った
だがまだ顔は幼い
コイツも死んだ『誰か』に会いたかったのか
・・・バカバカしい

「一匹で来るとはいい度胸じゃねぇか・・・」

コイツが俺の心を惑わせるとは
夢にも思わなかった

コイツは俺の太刀を左腕で受け止めた
アクマ・・・?
何か違うような気がする

「・・・・・・・・・
 お前・・・その腕はなんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・
 対アクマ武器ですよ
 僕はエクソシストです」
「何?」

その言葉にホッとした俺がいた
一瞬の動揺

「門番!!!」

それを紛らわすように門番に怒鳴った
何だこの感情は・・・

コイツは元帥からの弟子だと分かった
それでもこの気が紛らわせるならと
コイツに刃先を向けた

「あ カンダ」

そう名前を呼ばれ
ドキッと胸が跳ねた
つい睨むとコイツはこう続けた

「・・・・・・って
 名前でしたよね・・・?
 よろしく」

そういって手を出してきた

・・・・

「呪われてる奴と
 握手なんか するかよ」

平然とその場から去った
部屋に戻るとそのもやもやが頂点に達した

「・・・っ」

壁を殴った
何度も何度も
もやもやを押し込むように

ちっとも治まりもしねぇ・・・

くそっ

いったいなんだって言うんだ

バカバカしい・・・っ

その後
何も解決しないまま外へ出かけた
眼を覆い
木々
舞う木の葉を相手にする
慣れたものだが
この日に限って調子が出ない
もやもやもまっだく治まっていない
腹いせに木を数本切り飛ばした

イライラしたまま朝飯を取った
舌がバカになったように味を感じられなかった
そんな中
後ろでファインダーの連中が
死んだ奴の追悼を始めた

いつもなら放って置く
だが、今は違った
下らない言い争いに混じった

「飯食ってるときに後ろでメソメソ
 死んだ奴らの追悼されちゃ
 味がマズくなるんだよ」

ファインダーの1人が殴りかかってきた
いくら調子が出ないといってもそれぐらいは軽々避けられる
殴りかかってきた奴の首を引っつかむ
このまま殺してやろうとも思った

それを横から口出してきた奴がいた

「ストップ
 関係ないとこ悪いですけど
 そういう言い方はないと思いますよ」

腕を掴まれている
まじかで見るとやはり顔はおさない
男の癖に華奢な図体をしている

「・・・・・・・・・・・・放せよモヤシ」

名前を呼ぶことを拒絶した
今はこの呼び名で十分だ

「アレンです」

当然のことながらモヤシは言い返す
ムッとした顔がさらに幼く見える

すぐに指令だと呼び出された

「ふたりコンビで行ってもらうよ」

胸が高鳴った
その時理解した
この感情の『意味』を

トマの無線が通じないこと
『死んだ』と言ってやると悲しそうな表情を見せた
俺は忠告した
『助けない』と
『仲間意識を持つな』と

「嫌な言い方」

眼つきが変わった
コレでいい
俺は嫌われている方がいい

コレで・・・・

トマに化けていたアクマに引き裂かれて重症を負った
あれだけ言えばモヤシは俺を置いて行くだろうと思った
だが俺もトマも背負って逃げた
自分だって怪我負ってるくせに

人形の心臓を取れと俺は言った
モヤシは取れないといった

犠牲は必要だと俺は言う
モヤシは自分が犠牲になると言った

守れるなら守りたい、と

再度確認する
俺はこの青年に惹かれている
もうどうしようもない位

イノセンスをアクマに奪われ
激怒し
徐々にアクマを追い詰めていった

吐血して倒れこんだモヤシを見て
俺は考えるよりも先に体が動いていた

「もらった!!」

そういうアクマの攻撃を止めた
引き裂かれた傷口から血が流れ出す

「この根性無しが・・・
 こんな土壇場でヘバってんじゃねェよ!!
 あの2人を守るとかほざいたのはテメェだろ!!!
 お前みたいな甘いやり方は大嫌いだが・・・
 口にしたことを守らない奴はもっと嫌いだ!」

そう怒鳴ると

「は・・・は
 どっちにしろ・・・
 嫌いなんじゃないですか・・・」

と言い苦笑いした


ある満月の夜

俺はモヤシと会った


任務からの帰りで疲労は激しかった

それでも

久しぶりに会ったモヤシに

話そうと考えていた

アクマが回りに居たことに殆ど気づかないまま
気づいたときには何匹ものアクマに囲まれていた
モヤシの目の前に数匹のアクマ
後ろにいたアクマに狙われていた

「モヤシっ!!!」

俺は弾丸を弾き飛ばした

仕留め損ねた弾丸が俺の胸を貫いた

「神田・・・!!」

何泣きそうな声出してんだよ

俺は大丈夫だ

まだ動ける・・・・

・・・・

・・・・・力が入らない

眼を開けることもできねぇ・・・

それでも

いわねぇと・・・

コレだけは・・・・

「・・・ア・・レン・・・」

呼びたかった愛おしい者の名前

ずっと言いそびれていた言葉

あの満月の夜

ずっと想い続けていたことを

同じ満月の下で

お前を深く傷つけることになっても・・・

最後の言葉を

お前の言葉が聴けないのが心残りだがな



































「・・・愛して・・・いる・・・」
































この命が尽きようとも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

永遠に






































また会える日まで


































地獄で




















END


【満月】 神田ヴァージョンと言うことでした

地獄って・・・何か天国よりもそれっぽかったので;;;(ぇ)

少しでも楽しんでいただけたら幸いです;;;

by連鎖 志希